「賃金は本当に“市場”で決まっているのか?」


【前提整理】

  • 賃金は需要と供給で決まる、という説明が一般的に共有されている
  • 人手不足なら賃金は上がる、という期待がある
  • 日本では長期にわたり実質賃金が伸びていない
  • 同じ仕事でも、国や企業で賃金差が大きい
  • 「能力」「努力」「生産性」が賃金に反映されるという感覚がある

※ まずは前提を並べるだけ。正否は決めない。


【混同されがちな点】

  • 市場価格と制度的に決まる価格の混同
  • 人手不足と賃上げ判断の混同
  • 生産性(マクロ)と個人の生産性の混同
  • 賃金水準と可処分所得の混同
  • 競争市場と日本型雇用慣行の混同

【構造分解】

① 市場で決まる部分

  • アルバイト・非正規の一部職種
  • 短期需給が反映されやすい
  • 代替が効く仕事ほど価格が動きやすい

一部では確かに市場が働く


② 制度で固まる部分

  • 正社員賃金は年功・等級・社内規程が強く影響
  • 同一労働同一賃金が完全には機能していない
  • 賃金改定は年1回が多い

→ 価格調整が遅く・硬直的


③ 企業側の判断軸

  • 賃金=コストではなく固定費
  • 需要が持続する確信が必要
  • 一時的な人手不足では上げにくい

→ 市場信号があっても即反映されない


④ マクロ環境の影響

  • デフレ・低成長が長期化
  • 将来不安が消えない
  • 企業も家計も「守り」に入る

→ 市場が動いても、賃金だけが動かない状態。


【結論ではない整理】

  • 賃金は「市場だけ」で決まってはいない
  • 制度・慣行・将来不安が強く影響している
  • 人手不足=賃上げ、とは単純につながらない
  • 問題は
     → 市場がないことではなく
     → 市場の信号が届かない構造

このテーマは、

  • 「賃金を市場に委ねると何が起きるか?」
  • 「賃金を動かす“トリガー”は何か?」
  • 「最低賃金は市場を壊すのか?」

といった問いに分解できる。

賃金は価格だが、 完全な市場価格ではない。