①【前提整理】
日本では近年、次のような光景が繰り返されている。
- 政府・経団連・政治家が「賃上げを」と要請する
- 春闘では「何%賃上げ」という数字がニュースになる
- しかし中小企業・非正規・地方では実感が乏しい
- 物価は上がるのに、可処分所得は増えない
つまり、「賃上げしろ」という言葉と、賃上げできる現実の間に深い溝がある。
②【混同されがちな点】
- 要請すれば賃金は上がる、という政治的錯覚
- 大企業の賃上げ=国全体の賃上げ、という誤認
- 賃上げの「意志」と「原資」を混同する議論
- 名目賃金の上昇と、実質賃金の改善の混同
- 一時金(ボーナス)と、恒常賃金のすり替え
③【構造分解】
🔹 1) 賃上げに必要なのは「意志」ではなく「原資」
- 企業が賃金を上げる条件は単純
継続的に払える利益があるか - 要請があっても
- 利益がない
- 価格転嫁できない
- 需要が弱い
企業は上げられない - 意志だけでは、賃金は1円も生まれない
🔹 2) 賃上げ要請は「できる企業」にしか効かない
- 賃上げできるのは
- 利益率が高い
- 価格決定力がある
- グローバル展開している
企業 - できない企業ほど
- 要請がプレッシャーになる
- 無理な賃上げ → 体力消耗
- 結果:二極化が拡大
🔹 3) 政治的賃上げは「一時的」に終わる
- ボーナス増
- 一回限りのベースアップ
- 補助金付き賃上げ
これらは
- 恒常的な賃金成長を生まない
- 補助が切れれば元に戻る
→ 賃金の“トレンド”は変わらない
🔹 4) 原資を作る政策が後回しにされている
- 価格転嫁の弱さ
- 多重下請け構造
- 人件費にかかる実質的な税負担
- 生産性投資の停滞
これらを放置したまま
「賃上げしろ」は、
水のないところで蛇口をひねるようなもの
🔹 5) 現場に残るのは疲労と諦め
- 経営者:
- 責められる
- でも方法がない
- 労働者:
- 期待させられる
- でも上がらない
- 結果:
誰も得をしない空回り
④【結論ではない整理】
賃上げ要請が空回りするのは、
「賃金を上げる構造」を作らずに、
結果だけを要求しているから。
本当に問うべきは:
- 賃上げの原資はどこで生まれるのか?
- 価格転嫁・取引構造・税制は賃金成長に寄与しているか?
- 賃上げできない企業を責める前に、何を直すべきか?
賃金は
命令では上がらず、構造でしか上がらない。
