「同一労働同一賃金」は、なぜ効きにくいのか? 正論が“形骸化”する仕組み


①【前提整理】

「同一労働同一賃金」は、誰もが納得しやすい原則だ。

  • 同じ仕事なら、同じ賃金が妥当
  • 雇用形態で差をつけるのは不公平
  • 非正規の待遇改善につながる
  • 格差是正の切り札
  • 国際的にも正しい方向性

理念としては、ほぼ反対が出ない。
それでも現場では、効果が限定的にとどまっている。


②【混同されがちな点】

ここを混ぜると、制度が空回りする。

  • 同一労働同一職務の混同
  • 賃金差と、役割・責任差の曖昧化
  • 名目上の待遇と、実質的な処遇の混同
  • 法制度の整備と、運用の改善の混同
  • 不公平の是正と、コスト削減の混同

③【構造分解】

🔹A. 「同一労働」の定義が難しすぎる

現場では、

  • 業務内容は似ている
  • でも責任範囲が違う
  • 判断の重さが違う
  • トラブル対応が違う

といったグラデーションがある。

結果、

「完全に同一」と言い切れない仕事ばかり

になり、制度が使われにくい。


🔹B. 企業は「仕事」を細分化して回避できる

制度が入ると、企業は合理的に動く。

  • 業務範囲を微妙に変える
  • 名目上の役割差を作る
  • 評価項目を増やす

形式的には同一でない状態を作れる。

これは違法ではなく、
制度設計上の穴


🔹C. 賃金差の原因は、雇用形態だけではない

賃金差の実態は、

  • 賃金体系(年功・職能)
  • 昇給ルート
  • 教育投資
  • 配置転換
  • 解雇リスク

と深く結びついている。

同一労働同一賃金は、

表面の差しか触れられない。


🔹D. 正社員制度そのものが前提になっている

日本の賃金は、

  • 長期雇用
  • 昇進
  • 社内キャリア

を前提に設計されている。

この構造のまま、

非正規だけ横に揃えようとしても、無理が出る。


🔹E. 本当の格差は「入口と通路」にある

問題の本質は、

  • 非正規のまま上がれない
  • 昇給・昇進が閉じている
  • 教育投資が来ない

という通路の断絶

賃金を一時的に揃えても、

その先が分かれていれば、格差は再生産される。


④【結論ではない整理】

「同一労働同一賃金」は、
方向としては正しい。

だが、

  • 定義が難しく
  • 回避が可能で
  • 根本構造に触れない

ため、効きにくい

本当に必要なのは、

  • 職務の透明化
  • キャリア通路の開放
  • 教育・評価の一体設計

同一労働同一賃金は、
ゴールではなく、入口にすぎない。


🧭 次の問い(派生)

  • 「職務給にすると、日本はうまくいくのか?」
  • 「正社員制度は、誰を守って誰を閉じ込めているのか?」
  • 「雇用の公平性は、賃金以外でどう作るべきか?」